(株)ウェンズ 佐渡 陽一氏
父はサラリーマン。母はブティックの経営。そんな環境で育った佐渡さんは、幼い頃から両親の背中を見て育ったといいます。34歳で独立しましたが、起業は自然の成り行きだったとのこと。ためらいもなく経営者の道を歩むことに…

少年時代の佐渡さん(左)
子どもの頃は筋金入りの野球少年。朝から晩まで野球漬けの毎日でした。小中学生の頃は、リトルリーグ、シニアリーグで活躍。当時は甲子園、プロ野球をめざしていました。そのため、高校は、府内でも有力な某高校へセレクションで行きたかったとのこと。結果、断念しその高校には入れず。違う高校で野球をやることになりました。その高校では主将まで務め3年間がんばりましたが、甲子園、プロ野球への夢はここで潰えました。これが人生ではじめての挫折(良い意味での)だったと振り返ります。

その後、義理の兄の家にホームステイしていた交換留学生(アメリカ人)と話すうちに、渡米に憧れるようになりました。野球を諦めた反動もあり、渡米の思いは募るばかり。高校卒業後、半年間英語を猛勉強。その甲斐あって、秋からアメリカの短大付属英語学校に入学することに…。そこで約1年間間英語を学び、晴れてコミュニティーカレッジへ入りました。
最初の頃は英語を聞くことも話すこともできず、ストレスが溜まるばかり。病気にもなりました。英語が喋れなかったので、毎日図書館で2日遅れの日本の新聞5紙を隅から隅まで読み漁りました。今となっては、これが結構、その後の自分のビジネスにとって役立ちました。
アメリカでは3年間学生生活を送り、英語はひととおりマスターしましたが、家庭の事情もあって、大学への進学を諦め帰国。22歳の時でした。
帰国後貿易会社に就職。6年間勤務した後、取引先からの誘いもあり、在阪大手家電メーカーの新規事業開発子会社に転職しました。ここが佐渡さんの起業の原点です。この会社では様々な新規事業を立ち上げていました。佐渡さんはCafe事業の立ち上げから運営までを任されました。最後の2年は事実上オーナーとして、独立採算でロイヤリティを会社に払う仕組みで経営していました。
佐渡さん自身、若い頃のアメリカでの生活があまりにも過酷だったため、帰国すれば何も怖いことはないという自信がありました。そのため、持ち前のバイタリティを存分に発揮し、飛び込み営業も何のその。積極果敢に攻め続けていました。
そんな1つが、店舗を広告媒体としたトレイシートへの無料広告掲載でした。社内にはCafeなどの飲食店経営の他、マンション販売、新車・中古車販売、旅行、保険、清掃など、様々な事業があり、連携のチャンスを探っていました。同事業部や直営店の近隣に大手マンションデベロッパーがあったため、Cafeで出すトレイシートにマンションの広告を無料で載せる替わりにトレイシートの費用を負担して欲しいと打診。これが実現しました。たかが1枚60銭のことですが、トレイシート代が節約でき、経費削減につながりました。

これを契機にCafe周辺のマンションデベロッパーにも広告掲載の営業をし、数社から掲載依頼を取り付けました。当時は、インターネットが普及し始め、新聞購読者も減少気味で、新聞折込の効果が下がっていた時代。それに対して、周辺地域住民が集まるCafeで一定時間目にするトレイシート上の広告は効果覿面でした。広告を見た人の反応も良く、マンションデベロッパーからも喜ばれました。マンションデベロッパーからはギャラリーで出すコーヒー豆を買って頂き、本業の売上も増大。経費削減と売上増大の一石二鳥の効果的経営で、好成績を収めました。
その後、会社との条件が合わずCafe経営からは手を引くことになりましたが、Cafe時代に培った経験をもとに、広告業として独立・創業を果たしました。
独立してからは、Cafe時代につきあいのあったマンションデベロッパーに、新規分譲マンションの広告制作を提案しました。単にパンフレットを作るという単純なものではなく、マンション購入層の関心がありそうな周辺地域の企業、例えば外車販売企業、ショッピングストア、スポーツクラブ・ゴルフ場・証券会社・結婚式2次会場などからアライアンス広告を募集し、無料で広告を掲載する替わりに店舗などで配付する仕組みを提案、採択されました。これもCafe時代の経験で、媒体に付加価値を付けるというノウハウを応用したものでした。

独立・創業時にはいろいろな失敗もありましたが、「媒体に付加価値を付ける」という基本コンセプトのもと、サラリーマン時代より苦楽を共にしてきた奥さんと二人三脚で、分譲マンションだけではなく、他の分野へも業務を拡大してきています。
最近、ある先輩経営者の方から「人を採用して、その人のために会社を経営する。人(地域社会)のために働くことこそが会社の経営である。そのためにはビジョンを明確に持ちなさい。そしてそれを皆に言い続けなさい」ということを聞かされました。目から鱗が落ちる思いでした。
今は人の大切さを痛感する毎日。日夜人と会って、人から多くのことを学んでいます。「いつかは会社の規模を大きくし、御堂筋に会社を出したい。そのためには、まず“佐渡さんの会社で働きたい”という人を雇用できる魅力のある会社にしたい」と大きな夢を語ります。
聞き手:インキュベーションマネージャー 堂野 智史(2007年10月23日公開)

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佐渡 陽一
「(株)ウェンズ」