
「チャレンジャーズクリップ」は、メビック扇町に入所している「起業家=チャレンジャーズ」をメビック扇町スタッフの視点で紹介するインタビュー記事です。

ある日、メビックに1通の問合せメールが届いた。
『社長が倒れて、年内に会社を整理することになった広告制作会社に勤めています』
切実な書き出しで始まるメール。スタッフ一同に緊張が走った。
『是非将来の起業に向けて、有志がクライアントサポートを継続していきたいのですが、メビックのオフィスに入居ができればいいなと考えています』
彼が選択した道は、起業。メビックに入居したいという理由は書かずとも伝わってくる。
『パーティション区画ブースでは、クライアントの新商品情報など、得意先の守秘義務を守れない可能性があり、難しいと思っています。アドバイスをいただけると助かります。よろしくお願いします』
こうしてメールの内容は閉じられていた。クライアントの立場を優先して個室の入居を考えていることから、起業家としての資質は十分あると感じた。
こうして、私達と出会うことになったのが松井氏だ。
松井氏は大学でマーケティング・コミュニケーションとデザインを学び、卒業後は神戸のデザイン会社に就職。数年後、もっと人の目に触れる大きな仕事をしようと大阪の企画制作会社に移り、12年の間、企画書も書くデザイナーとして頑張ってきた。
「クライアントの問題を解決するのが私の仕事」という松井氏。クリエイティブの原点を常に忘れず、クライアント第一に徹する姿は、メビックに送られてきた問合せメールにも表れていた。

クライアントとエンドユーザー間のコミュニケーション・ギャップを埋めるために、言葉のキャッチボールを繰り返す。営業と対話、コピーライターと対話、デザイナーと対話、カメラマンと対話…。
いろんな立場の人の意見を交通整理することが自分の役割で「結局、今回の案件はこーゆーことで行きます」と、大きなベクトルをみんなの前にドンと置く係だと言う。
これでプロジェクトに携わっている人たちが、さーっと動き始める。グラフィックの作業は、全体から見渡せば、ほんの一部の作業だと言う。

「話せばわかる」がモットーの松井氏。世の中に溢れる無関心、無理解、誤解…。すべてコミュニケーションが無いか、うまく機能していないかのどちらか。だから腹を割って話し尽くせば、ほとんどのことは解決できると、真剣に考えている。
人一倍人見知りで、赤面症で、汗かきだそうだが、「ダイアローグ」(対話)という名前の会社にしたのも、この考えから来ているようだ。クライアントの企業内で、広告代理店内で、制作会社内で伝言ゲームで運ばれる情報の質は、どんどん薄くなる。
「みんなが自分の『伝える役割』をきちんと全うすれば、世の中のほとんどの紛争は解決し、もっとシンプルでストレートに運ぶのに」
彼にとって、世界にはまだまだ対話が足りないようだ。
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「対話を避ける発注者の仕事は、よーしません」
「問答無用! と、表現指向の作品を押しつけるような芸当もできません」
不器用だが、こつこつと問答を繰り返して、疑問をクリアにして行きながらクライアントの利益になる方策を探すことでしか問題解決の糸口は見つからないと言う。クリエイティブ・ディレクターとデザイナー、社内での問答は激しくぶつかり合うことも少なくない。でも、この二人の対話こそが仕事の質と説得力を高めていくのだ。
将来はクリエイター同士が互いに切磋琢磨して自己活性化でき、厳しさと楽しさが共存する、オトナの組織を作りたいという松井氏。ややのんびりと見える彼の風貌からは想像できないほど、コミュニケーションに対する厳しい眼差しが垣間見えた。
チャレンジャーズクリップ Vol.55 公開:2006年10月10日
聞き手 文:インキュベーションマネージャー 長川 勝勇

2008年8月末に卒業されました。
大阪市中央区南本町1-5-6
スミヤビル501
06-6264-5010
06-6264-5020
http://www.dialogue-design.jp/
松井 孝至