
「チャレンジャーズクリップ」は、メビック扇町に入所している「起業家=チャレンジャーズ」をメビック扇町スタッフの視点で紹介するインタビュー記事です。

黄栞舎と書いて「きかんしゃ」と読む。その心は、幸せの黄色いハンカチ、ならぬ黄色い栞(しおり)に託してみんなに幸せを運ぶ会社をめざしたいという高尾さんの強い思いが込められている。もちろん、ブランディングカラーは黄色である。
高尾さんは、高校時代、美術部で活動し、大阪府高等学校美術工芸展(高校展)では優秀賞を取ったこともある実力派だ。でも、すぐに収入につながらないような美術の世界で食べていくつもりはなかったという。高校卒業後、何をしたいのかもわからないまま、運良く入った会社で汎用機のプログラマーになった。が、安心したのも束の間、その会社が倒産する憂き目に……。当時は未だ十代。会社は絶対的な存在ではないということに気づいたという。
その後、手に職と考え、未経験ながら建築設計事務所に入ったが、仕事に必要な資格について壁にあたることに……。二級建築士になる場合、たたき上げで資格を取るには七年以上の実務経験を有した。それに対し学卒者は、既に資格を持って入社してくる。この差に矛盾を感じて、早々に見切りを付けた。今となってはその判断は正しかったと自負している。
建築設計事務所を離れた後は、省エネ機器の訪問販売、ネットワーク機器メーカーの営業、ネットワークエンジニア、インターネットショップ運営など、「時代を先読みした技術の習得」をテーマにいろいろな職業を渡り歩いた。この異業種への転職が今日の黄栞舎を動かす原動力となっている。
しかし、営業にしろ、コンピュータにしろ、人脈や技術はある程度身につけたものの、そのすべてがモノのある企業に属さないと活かされない技術で、モノのない歯痒さを日々感じていた。

そこで、原価がなく、仕入れも、設備投資も要らないデザイン業をしようと考え、絵画や書道、彫刻などのアーティストをプロデュースする出版社に運良く入社することに……。そこでは、美術本の制作や美術展覧会の開催にまつわる制作を行い、美術の歴史についても深く学ぶことができた。皮肉にも高校時代にあきらめた美術の世界で食べていくことになる。
常に変化することをいとわない高尾さん。この美術出版社にも次第にマンネリを感じ始めた。勤め人の息苦しさから開放されたい、もっと外の世界を見たいという気持ちが徐々に強くなっていった。

ちょうどその時にタイミング良く、いろんな条件が揃うことに……。
○今日のパートナーである西村さんも同じ思いを持っていたこと。
○資本金は無いが「株式会社」を譲り受けたこと。
○ライターや会計士など協力してくれる仲間がいたこと。
○景気が回復しつつあること。
そして、メビックを見つけたこと、である。
思い立ったら吉日。これをタイミングと考え、デザイン会社というより、企画ができる会社として独立創業することに……。

黄栞舎は、「幸せの黄色い会社」であり続けたい。関係する人々がLucky!Happy!になり、自分たちもLucky!Happy!になる。そんな願いを持ち続け、幸運・幸福のイメージでもある黄色を栞にして、多くの人に配りたいと考えている。その栞を持った人が幸せ行きの『きかんしゃ』に乗ることができるというストーリーもあるそうな……。
早速、偶然にも新規のクライアントに億単位の大きな仕事が入り「黄栞舎と付き合うようになってから運が向いてきた」といわれたという。その社長は高尾さんの名刺を自分のパソコンに貼っているとのこと。まさに幸せを呼ぶ男そのものである。
制作物には決して妥協を許さず、ありとあらゆる手段を使って慎重に制作することを心掛けているという。その一方で、完成品に対しては、客観的に「素人が見たらどう思うか」を考え、理由のある制作物としてクライアントが想定する以上のモノを提示することをモットーにしている。
『玄人の目で作り、素人の目で見る』というこの姿勢が、制作物のレベルを高め、クライアントに喜ばれる仕事につながっている。現に外資系の化粧品企業のプロモーションを直接任されていることからも、クライアントの信頼が厚いことをうかがわせる。

「デザインには飽きが来るから、常に変化し続ける必要がある」という高尾さん。デザイン業にこだわらず、どんどん新しい企画を考えてチャレンジしていきたいと抱負を語る。現在、新しいサービスを準備中とのこと。年内には開始し、徐々に情報発信型の会社に転換していきたいと夢を語る。その表情には微塵の迷いもない。
チャレンジャーズクリップ Vol.50 公開:2006年05月23日
取材 文:インキュベーションマネージャー 堂野 智史

※2008年2月末に卒業されました。
大阪府高槻市芥川町2-16-6
072-665-8600
072-681-3900
http://www.kikansha.co.jp/
高尾 毅