
「チャレンジャーズクリップ」は、メビック扇町に入所している「起業家=チャレンジャーズ」をメビック扇町スタッフの視点で紹介するインタビュー記事です。

高校を卒業して広島から上京し大学生活を過ごしました。世間はバブル経済真っ只中でした。社会人になるにあたり、勝手に「サラリーマンは自分には合わない」と思い込み、就職せずに、アルバイトをしながら本を読んだり旅行をしたりしていました。
当時「フリーター」「ニート」という言葉はまだありませんでしたが、まあ似たようなことをやっていたのだと思います。そのうちに自分に適した「何か」が見つかるはずだ、と思っていたのです。もちろんぶらぶらしてたって何も見つかりません。今では「何か」は見つけるのではなく「作る」のだ、と考えていますが、当時はまあ、浅はかでしたから。
とはいえ、何が見つかるわけでもなく、景気も段々と悪くなってきて、比較的時間が自由になる公的機関に就職。たまたま上司2人が民間企業からの出向者だったので、このときコスト意識や民間の感覚を仕込まれました。また、業務を通じて経営難の企業を見ることが多く、悲惨な事例を目の前で見るにつけ、「バブル崩壊といい、会社を経営することといい、こんな大変なこと を自分にできるハズがない」と、自分が起業 するなどとは露とも思っていませんでした。ただ「自分の力で何かをできるような力をつけたい」という願望はあったと思います。

7年ほどたったある日、大阪の知人から創業支援施設の立上げの話が持ちかけられ、これこそ自分を鍛えるチャンスだと思い、迷うことなく大阪へ。「東京にいたから大阪も変わりないだろう」と高をくくっていたところが、血相を変えて自転車をすっ飛ばしていく大阪の女性たちを見て「こりゃえらいところにきた」と感じたのを覚えています。
立上げの仕事は面白かったのですが、同時に自分に何が欠けているのかを強烈に認識しました。そこで学んだことは「一度始めたら継続する。一度始めたら集中する。」ということでした。民間人材を登用して公的機関の活性化を図る、というのが先方の本来の意図だったのですが、私の場合最終的には「自分を活性化せさていただいた」というのが正直なところです。
あれこれ考えて手を広げすぎてしまう傾向が強かったので、継続と集中が自分にとってテーマだと気付いたのです。修行させてもらったことは本当に感謝しています。早くこの恩返しをしたいと思っていますが、相手は公的機関ですから、やはりその恩返しは「納税」ということ でしょうかね(苦笑)。

立上げの仕事も一段落し、再度「これからどこで何をすればいいか」と考えていた時、目の前に出てきたのが高校時代から関心のあった画像処理や映像の世界でした。ただ、これらの業界に就職しても若手の仕事は単なる“手足”で収入も低いので普通にやったのではダメだ、と思いました。
起業するにも厳しい業界で、相談したいろんな人から「この業界はもう終わってる」などと言われ、自分では「これからの業界なのに何故?」と不思議に思っていましたが、映像制作と言えばTVが中心でキー局を中心に完全に固まった業界でした。

「自分で映像を作り、プロモーションに用いる市場はまだ行けるのでは?」となんとなくぼんやり思いながら、根拠はゼロでしたがいつのまにか「あ、俺は起業するんだな」という気持ちになっていました。理由は今でも不明です。ただ問題は「まだ仕事として映像を撮ったことがない(!)」という事実でした。実はそのころ、今のカミサンと結婚を決めたところだったのですが、彼女に「今の仕事やめて起業するわ」と突然告白したら意外にもOKでした。
短期間に修正不能の方向へ人生の舵をとったわけですが、この2つの決断は今も後悔していません。周囲の人たちのおかげで、映像制作を経験し、広告の仕事が入っていよいよスタート。まだまだこれからレベルを上げて行かなくてはなりませんが、自分の中にレベルの目盛りが見えてきて、目標やお金、時間のかけ方などが少しずつ分かってきました。「スキルを磨き、人間関係を築き実力をつけ身の丈でやっていけば勝負できる」という感覚です。…要するに「実力全般」ということなんですけどね(笑)。

経営者としては当然ながらよちよち歩きの段階です。まだまだ自分を鍛えて行きたいと思います。勤めていた仕事とは関係のない分野で起業しましたが、あれほど目移りのする自分がここまで継続していることに「俺ってけっこうやるじゃねえか」と自分で自分を褒めている部分もあります。
クオリティーを高め、見る人が面白い、よかったと思えるものを作っていくことが目標です。起業まで寄り道が長くて、効率が悪く見えるかもしれませんが、その間見聞きし体験したことが仕事の幅を広げ、結果的に活きているのでしょう。遠回りをしてきたと自分でも思いますが、もう迷いはありません。「これからは最短距離で走ろう」と決めています。
チャレンジャーズクリップ Vol.32 公開:2005年08月09日
聞き手 文:インキュベーションマネージャー 長川 勝勇

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森 康裕
「(株)プロモード」