
「チャレンジャーズクリップ」は、メビック扇町に入所している「起業家=チャレンジャーズ」をメビック扇町スタッフの視点で紹介するインタビュー記事です。

もともとはNTTにいて、基礎研究、応用研究、サービス開発、そしてマネジメントに携わり、10年ほど前に(株)ATR知能映像通信研究所に移りました。
そこはマルチメディア技術を通信にどう活用するか、という基礎研究のための機関でしたが、そこで得られた研究成果を社会に還元したいと考え、ベンチャー企業を立ち上げてサービス、製品を開発・販売していくことにしました。2001年9月のことです。
提供するサービスや製品としては、CGやゲームなどのマルチメディアコンテンツやインタラクティブアートをイメージしていました。アーティストやデザイナーと技術者をつないで製品を開発し、CD-ROMやDVDの形で一般消費者に販売していくというビジネスモデルです。

当初は今ほどロボットを強く打ち出してはいませんでしたが、創業2年目にある行政機関の子供向けロボットの開発を請け負ったことから、その後ロボットの開発・販売へのシフトが進んでいきました。
昨年12月には「太極」(TAICHI)という、太極拳の動きができるヒューマノイド(人型ロボット)の販売を開始しました。価格はソフトウエア込みで70万円。徐々に実績も生まれてきています。

写真はイベント用モーションと
外装を付けた非売品です
ロボットには大きく分けて “ユビキタス” と“ヒューマノイド”の二つの方向があります。さまざまな情報端末をネットワーク化し、環境そのものをロボットとみなすユビキタス、人の形をしていて、人間に近い能力を発揮するヒューマノイドのどちらにも大いなる可能性を感じていますが、私自身としてはヒューマノイド、それも人間との身体的なコミュニケーションを充実させたヒューマノイドにとても関心を持っています。
ゲームや携帯電話は、子供が毎日毎日何時間もゲームで遊ぶようになったり、コミュニケーション自体を楽しむために携帯電話を使ったり、という、それまで考えも及ばなかった社会現象を生み出しています。消費者が作り手である技術者の発想を超えて新たなメディアの可能性を広げてきたわけですが、一方でゲーム脳や出会い系サイトといった危険性も指摘されるようになってきています。
最終的にはマーケットが何をどう受け入れるかに委ねざるを得ないところがありますが、技術者は新しいメディアが社会の中でどう使われるかをきっちり考えながら開発をするべきだと考えています。

自動車や家電といった従来の製造技術は我々の生活を物質的に豊かにしてきましたが、IT=情報技術は我々の生活を精神的に豊かにする可能性を持っています。私はITが持っているそうした可能性を具体的に提案していきたいと考えています。

今メンバーは9名です。開発が5名、営業が1名、あとはデザイナー、事務、そして私です。私自身は今でも社長業のかたわら大学で教鞭をとっています。ベンチャー企業にとっては、常に新しい情報、新しい技術を提供してくれる教育・研究機関との提携は大事なことなのです。
今後の展開としては、ハードとしてのロボットではなく、お年寄りの話し相手、子供の遊び相手、家事の手伝いなど、ロボットを動かすソフトウエアの可能性を追求していきたいと考えています。まだまだマーケットは未成熟ですが、何ができるロボットなら受け入れてもらえるのかを探りつつ、新たにマーケットを作っていきたいと思っています。それこそがベンチャーの役割ですから。

※写真はイベント用モーションと外装を付けた非売品です
チャレンジャーズクリップ Vol.23 公開:2005年04月05日
取材 文:コラボレーションマネージャー 山納 洋
※2006年6月末に卒業されました。