
グラフィックデザインを手がけるCAVE(カーヴ)の村尾さん。
「小学校の図書室の本はほとんどと言って良いほど読みました。」というほど読書少女だったようです。その頃から漠然と「いつかは本を作ってみたい」と思っていたといいます。絵を描くことや音楽、そして勉強も好きだったという村尾さんですが、家庭の事情により大学進学は断念。高校卒業後、育った舞鶴を出て、大阪で歯科助手として働きます。資格も取り、仕事は頑張っていたのですが、「自分で考えてものを作る仕事をしたい。いつかは本を作りたい。」と考えるようになり、少しでも本づくりに近い制作会社に転職します。
しかし、任された仕事は以前の仕事で培ったPCスキルを買われて、データベース関連の仕事でした。社内にはデザイン部門もあったので、まずは異動したいと思いますが、デザインに関しては全くの素人、そこで仕事をしながらデザイン学校の夜間部に通い始めます。本業自体が限界に近い残業量の中、残業の途中で抜けて学校に行き、帰社して更に仕事、帰宅して学校の課題をこなすというハードな日々を過ごし、仕事の最中に過労で起き上がれなくなってしまい、3回も救急車で運ばれたそうです。
そうした生活を2年間続け、学校を卒業し、デザイン部への異動願いを出しますが、実現するまでには更に2年かかりました。ただ、その間にもデザイン関連の仕事は少しずつ任されるようになりました。
異動したデザイン部では旅行本やパンフなどのレイアウトを任されるようになりますが、あくまで言われたモノをそのまま作るオペレーター的な仕事、そして相変わらず続く激務の日々。理想と現実のギャップに悩んだ結果、10年勤めた会社を退職することに。

会社を辞めてしばらくはこのまま同じ業界に残るのか、他の仕事を探すのかで随分と悩みました。ただ、生活はしなくてはならないのでフリーで仕事を請けつつ、派遣の仕事をする日々がしばらく続きます。実は会社に所属していた時より、収入は少し減ったのですが、労働時間は激減した為、自分を見直す良い機会だと思う事とし、進学していたらやりたかった心理学やフランス語の勉強に取り組みます。これを学ぶ事で、人との関わり方や、日本人特有の考え方のクセに気づく事となり、「この年齢だからこうしなきゃ!」という考え方から「いくつになってもやりたい事は出来る」に変化しました。
「やりたい事」を諦めるには早すぎる事に気づき、社会に戻る事を決心してとあるデザイン事務所の面接を受けて再就職します。
そこで任されたのは通販カタログの仕事でした。この仕事では多くの人と関わる業務を通じてディレクション能力を磨くことが出来ました。しかし、やはり労働環境は苛酷で盆も正月もない日々が続きます。そして1年ほど経った頃、そのデザイン事務所は他の事業が頓挫して倒産してしまいます。しかしまだ請けている仕事が残っている為、発注してくれていたディレクターの事務所に居候して仕事を完遂することに。
こうして会社も仕事もなくなった村尾さん。今の状況から自分のやりたいことをやるためには独立しかないと考え、同じ会社に居た上田さんと一緒に事業をしようという話になります。資金もありませんがとりあえず以前の派遣先の社長が事務所の一角を貸してくれたので、まずは新規営業を開始します。ただ、手ごたえは感じつつもなかなか受注につながりませんでした。
そんな中、メビックの入所募集の案内を目にします。面接に臨む時に「ここに入れなかったら事務所も諦めて解散するしかない」と思ったと言いますが、結果、面接をクリアして入所が決まります。

メビックに入所して数ヶ月、殆どゼロからスタートしたCAVEですが、クライアントも少しずつ増え、リピートで仕事ももらえるようになってきました。
「実は得意なのはロハス系なんですけどね」と言いつつも、クライアントからの「キレイすぎず、ベタ過ぎない」という要求にも応えていると評される村尾さんと、どちらかというと意表を突く提案が得意の上田さん、CAVEの強みは全く違うテイストの提案が可能な二人のコンビネーションにあります。
事業は2年目ですが、二人共経験はしっかり積んでいます。「小さいながらも仕事は選んでやりたい。筋の通らない仕事の進め方を要求されたり、手を抜かないとできない量の仕事は請けないことにしています。今までリピートで仕事をもらえているのは一つ一つの仕事を手を抜かずやれたからと思っているので。」と、仕事に対するスタンスははっきりしています。

今後つくりたいものは「ジャンルを問わず、大事にされるものを作りたい。使い捨てではなく、ずっと持ってもらえるものを作りたいと思う。具体的にはすぐには難しいかもしれないけど、やはり本を作りたい。大人にも読んでもらえる絵本や写真集で、ちょっとした間に読めて、ずっと持っていたくなるようなものを作りたいですね。」と言います。
それは昔から本が好きだったから?と聞くと「それもありますが、今まで辛い時や、しんどい時に、本の中の言葉に助けられたり、救われたりした事が何度もありました。今度は自分がそういった本を作ることができればと思います。」とのこと。
ここに来るまで、決して順調な道のりではなく、人一倍の苦労をしてきた村尾さん。しかしここまで来る原動力となった「自分で企画してものを作る。出来れば本を作りたい。」という思いは決して諦めることなく持ち続け、実現させるような、大人しい雰囲気の中にそんな力強さを感じるインタビューでした。
チャレンジャーズクリップ Vol.89 公開:2009年07月21日
取材 文:インキュベーションマネージャー 増見 浩一朗

※2010年1月末に卒業されました。
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06-6535-1186
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村尾 智子
企画, グラフィックデザイン, 広告・宣伝, 販促, カタログ・ちらし
「CAVE」